Panel six - Selected by Mirai KOIZUMI

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小泉美來による山本美空の『あやめと少女』についての キュレーターコメント

今回の展示会テーマ「cultivate」は、土地を耕す、栽培するという意味から、品性や才能を磨くなどの意味まで、多様な捉え方ができる言葉だ。本作『あやめと少女』の作者である山本美空さんは、このポストカードに「自然のままで生きる人間の強さと、その人が歩んできた歴史が人を美しくさせる。」という制作意図を込めた。これは、「cultivate」の意味の中でも、品性や才能を磨く、洗練するという意味を捉えて製作されたものだと考えられる。

作中に描かれた女性は、タイトルからして少女なのだと思うが、古代ギリシャの衣服キトンを彷彿とさせる襞のあるドレスや、足元でそよぐあやめの様子から、春そのものか、春風を擬人化した女神か妖精のような神秘的な存在にも思える。

また、作者は、好きなアーティストは誰かという質問に対し、ミュシャをその内の一人に挙げている。ミュシャのイラストレーションに見られる美術様式であるアール・ヌーヴォーは、草花など自然界のものを描く特徴があり、「cultivate」の、耕す、栽培するといった自然に根ざした意味を表現することに適していると考える。

そうした様式からの影響を感じる本作も、“cultivate”という自然と関連した言葉を、可憐さや優雅さを伴いながら表現した作品だと言える。

小泉美來によるジョージア・グラントの 『Urban Growth』についてのキュレーターコメント

今回の展覧会テーマ「cultivate」には土地を耕す、栽培するといった自然と関わりが深い意味がある。一方で本作『Urban Growth』は、「都市の発展」という意味に訳すことができるのに加え、作品を見た印象も大都市に立ち並ぶ人工的な高層ビル群のようで、自然とは対照的に思える。では、この作品には「cultivate」とどのような関連性があるのだろうか、私はそのような疑問を持ち、本作を選出した。

本作の作者であるジョージア・グラントは、3Dデザインを専門とし、作品には建築的な表現方法が見られる。本作を制作するにあたり、作者は様々な接合の仕組みを調べ、それらの仕組みがどのように効果的であるかを探求したかったと語り、そうした探求によって自然と作品が出来上がっていくようなかたちで本作は作られた。また、作者は好きなアーティストに建築家のフランク・ゲーリーを挙げており、彼の作品に見られる流動的な感覚を、本作では起伏のある複数の高さの違いというかたちで取り入れている。

「cultivate」という言葉は、自然と人工の世界の相互関係を表現している。本作は、素材に使われている木材の効果によって、ある意味で木々の生えた森のように見えるが、別の意味では大都会の中心地も表現されている。

山本美空

山口県出身 女子美術大学アートプロデュース表現領域所属

趣味はイラストを描くこと

ジョージア・グラント

イギリス、ダービーシャー州出身 ラフバラ大学アート&デザインファウンデーションコース、3Dデザイン専門所属 素材を用いた物理的な模型制作

小泉美來(キュレーター)

東京都出身。女子美術大学芸術文化専攻2年 西洋美術史ゼミ、日本美術史ゼミ所属